2022年読んでよかった本
2022年は、丸一年無職時代となった(アルバイトを除く)。
拘束時間がないので好きなだけ本が読める。うつ状態じゃない時期は集中して本が読める。本当に読書好きとしては最高の1年だった。金銭的な面では底辺だったが。
好きなだけ本が読めるとあって、今年は社会人になって最も多く、そして幅広いジャンルの本に手を出した年になった。小説、エッセイ、詩集、論文集、学問の専門書などなど…
その中から今年読んで特によかった3つを紹介する。
■水上バス浅草行きー岡本真帆
Twitterで見かけてファンになった岡本真帆さんの短歌集。
岡本さんの短歌はユーモラスで温かい歌もあれば、ノスタルジックで胸の奥の古傷が痛むような歌もありバラエティ豊か。そのどれもが優しく私たちを包んでくれる。
特に犬の短歌が好きだった。私は犬を飼ったことはないけれど、岡本さんの犬の短歌を読むとかつてともに過ごし、そして今はもういない犬とのない記憶が呼び起こされる。犬を撫でたときの感触まで手に蘇るよう。
岡本さんの犬への愛、そして犬の岡本さんへの愛まで伝わる短歌集です。
■アイドルについて葛藤しながら考えてみた ジェンダー/パーソナリティー/<推し>ー香月孝史、上岡磨奈他
タイトルの通り、アイドルについて葛藤しながら考えてみる論考集。
主に女性アイドルに対する世間の目、扱われ方などを考察している。もちろん、その視点は男性アイドルに当てはめられる箇所も多い。
自分自身も男性アイドルが好きだ。
彼らは一般人からは想像もできないような日々の努力を積み重ね、かつステージ上ではそんな泥臭い努力なんてなかったかのように私たちに夢と希望だけを与えてくれる。私たちはそんな彼らに陶酔する。
ただ、たまに思う。「これでいいんだっけ」と。同じ人間に対して、こんな扱いをしていていいんだっけ。まるで彼らの人生を消費するような、踏み躙るような、こんな立場から彼らを扱っていいんだっけ。
アイドル(特に女性アイドル)についての扱いは近頃ようやく見直され始めているが、それは彼女たちが大声を張り上げて、ようやく一部の世間が気づき始めた程度なのだ。変わらなくちゃいけないのは彼女じゃない。努力しなきゃいけないのは彼らじゃない。
私たちファンの方だ。
そんな気づきを与えてくれるのが本書。
アイドルを取り巻く環境については未だ改善の初期段階で、どう接するのが正解か明確な答えは出ていない。しかし、それでも考え続けることが大切なのだと思う。
■水中の哲学者たちー永井玲衣
哲学の研究者であり、哲学対話のファシリテーターを務めている著者による哲学エッセイ。
小・中学校での哲学対話の授業、その中での児童・学生たちの言葉を通して、彼女は思考の海を彷徨う。そして、柔らかく温かく、ユーモアにあふれた彼女の文体に手を引かれ、読者は知らぬ間に思考の海で著者と一緒に溺れている。
今年一番夢中になって読んだ本です。
世の中の「そういうもの」とされていることを、無抵抗に受け入れない、受け入れなくていいということを学んだのもこの本。考えて考えて考え続けなければ、私たちはあっという間に息の根を止められてしまう。私たちの自由は大きな力に簡単にねじ伏せられてしまう。
読みやすい文体で、哲学の入り口としてもオススメ。大人も子供もこれからの時代に必読となりそうな一冊です。
振り返るとこんなにもしっかり本が読めた2022年は幸せだった。
この幸せが永遠に続きますように🙏💫